企業会計ナビ

「時価の算定に関する会計基準」等のポイント

2019.07.19
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 村田 貴広

2019年7月4日に、企業会計基準委員会(ASBJ)及び日本公認会計士協会(会計制度委員会)より以下の会計基準等(以下、ASBJから公表された会計基準等を「本会計基準等」、日本公認会計協会から公表された実務指針等を「本実務指針等」という。)が公表されています。

<ASBJから2019年7月4日に公表>

  • 企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「時価算定会計基準」という。)
  • 改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産会計基準」という。)
  • 改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)
  • 企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「時価算定適用指針」という。)
  • 改正企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」という。)
  • 改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下「金融商品時価開示適用指針」という。)

<日本公認会計士協会から2019年7月4日に公表>

  • 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨建実務指針」という。)
  • 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)
  • 「金融商品会計に関するQ&A」(以下「金融商品Q&A」という。)

我が国においては、金融商品会計基準等において、時価(公正な評価額)の算定が求められているものの、これまで算定方法に関する詳細なガイダンスは定められていませんでした。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、公正価値測定についてほぼ同じ内容の詳細なガイダンスを定めています。これらの国際的な会計基準の定めとの比較可能性を向上させるために、2016年8月にASBJが公表した中期運営方針において、日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みに関する検討課題の一つとして時価に関するガイダンス及び開示を取り上げていました。これらの状況を踏まえ、ASBJは、主に金融商品の時価に関するガイダンス及び開示に関して、国際的な会計基準との整合性を図る取組みに着手し、検討を重ねて、今般、本会計基準等を公表するに至ったものです。

また、時価算定会計基準、時価算定適用指針及び金融商品会計基準は、既存の日本公認会計士協会の実務指針等にも影響するため、ASBJで検討の上、同協会に改正を依頼しており、当該依頼を踏まえ、2019年7月4日に同協会より、本実務指針等が公表されたものです。

1. 本会計基準等の概要

(1) 開発にあたっての基本的な方針(時価算定会計基準第24項及び第25項)

ASBJでは、時価算定会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、統一的な算定方法を用いることにより、国内外の企業間における財務諸表の比較可能性を向上させる観点から、国際財務報告基準(IFRS)第13号(以下「IFRS第13号」という。)の定めを基本的にすべて取り入れることとされています。ただし、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、個別項目に対するその他の取扱いを定めることとされています。

また、IFRS第13号では公正価値という用語が用いられていますが、時価算定会計基準では、我が国における他の関連諸法規において時価が広く用いられていること等を配慮し、時価という用語が用いられています。

(2) 範囲(時価算定会計基準第3項、第26項から第28項)

時価算定会計基準は、次の項目の時価に適用することとされています。

  • 金融商品会計基準における金融商品
  • 棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産

金融商品については、国際的な会計基準と整合させることにより国際的な企業間の財務諸表の比較可能性を向上させる便益が高いものと判断し、時価算定会計基準の範囲に含めることとされています。一方、金融商品以外の資産及び負債については、時価算定会計基準の範囲に含めた場合の整合性を図るためのコストと便益を考慮し、原則として、金融商品以外の資産及び負債は時価算定会計基準の範囲に含めないこととされています。ただし、棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産については、売買目的有価証券と同様に毎期時価をもって貸借対照表価額とし、評価損益は当期の損益とする処理が求められており、時価の算定についても金融商品と整合性を図ることが適切と考えられることから、時価算定会計基準の範囲に含めることとされています。

(3) 時価の定義(時価算定会計基準第5項、第31項、金融商品会計基準第18項)

<時価の定義>

  • 「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう。
  • 時価は、直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格(資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格)であり、入口価格(交換取引において資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格)ではない。
  • 同一の資産又は負債の価格が観察できない場合に用いる評価技法には、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする。

<期末前1カ月の平均価額の削除>
時価の定義の変更に伴い、金融商品会計基準におけるその他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めについては、その平均価額が改正された時価の定義を満たさないことから削除されています(ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いが踏襲されています。なお、この場合であっても、減損損失の算定には期末日の時価を用いることとなります。)。

(4) 時価の算定単位(時価算定会計基準第6項、第7項)

資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によるとされています。しかし、次の要件のすべてを満たす場合には、特定の市場リスク(市場価格の変動に係るリスク)又は特定の取引相手先の信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)に関して金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができるとされています。なお、本取扱いは特定のグループについて毎期継続して適用することされています。

  • 企業の文書化したリスク管理戦略又は投資戦略に従って、特定の市場リスク又は特定の取引相手先の信用リスクに関する正味の資産又は負債に基づき、当該金融資産及び金融負債のグループを管理していること
  • 当該金融資産及び金融負債のグループに関する情報を企業の役員に提供していること
  • 当該金融資産及び金融負債を各決算日の貸借対照表において時価評価していること
  • 特定の市場リスクに関連して本項の定めに従う場合には、当該金融資産と金融負債のグループの中で企業がさらされている市場リスクがほぼ同一であり、かつ、その金融資産と金融負債から生じる特定の市場リスクにさらされている期間がほぼ同一であること
  • 特定の取引相手先の信用リスクに関連して本項の定めに従う場合には、債務不履行の発生時において信用リスクのポジションを軽減する既存の取決め(例えば、取引相手先とのマスターネッティング契約又は当事者の信用リスクに対する正味の資産又は負債に基づき担保を授受する契約)が法的に強制される可能性についての市場参加者の予想を時価に反映すること

(5) 時価の算定方法(時価算定会計基準第8項から第15項)

時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(そのアプローチとして、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチがある。)を用い、評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にすることとされています。

時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用することとされています(レベル1のインプットが最も優先順位が高く、レベル3のインプットが最も優先順位が低い。)。

  • レベル1のインプット
    レベル1のインプットとは、時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないものをいう。当該価格は、時価の最適な根拠を提供するものであり、当該価格が利用できる場合には、原則として、当該価格を調整せずに時価の算定に使用する。
  • レベル2のインプット
    レベル2のインプットとは、資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプットをいう。
  • レベル3のインプット
    レベル3のインプットとは、資産又は負債について観察できないインプットをいう。当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる。

時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類するとされています。なお、時価を算定するために異なるレベルに区分される複数のインプットを用いており、これらのインプットに、時価の算定に重要な影響を与えるインプットが複数含まれる場合、これらの重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類するとされています。

負債又は払込資本を増加させる金融商品については、時価の算定日に市場参加者に移転されるものと仮定して、時価を算定するとされています。

負債の時価の算定にあたっては、負債の不履行リスクの影響を反映します。負債の不履行リスクとは、企業が債務を履行しないリスクであり、企業自身の信用リスクに限られるものではなく、また、負債の不履行リスクについては、当該負債の移転の前後で同一であると仮定するとされています。

(6) その他の取扱い(時価算定適用指針第24項)

時価算定適用指針では、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、次のその他の取扱いが定められています。

<第三者から入手した相場価格の利用>
取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができる。

上記の定めにかかわらず、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ、総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団又は企業以外の企業集団又は企業においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団又は企業から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、次のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができる。

  • インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
  • インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約

(7) 市場価格のない株式等の取扱い(金融商品会計基準第19項及び第81-2項、金融商品時価開示適用指針第5項

時価算定会計基準においては、時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットに基づき時価を算定することとされています。このような時価の考え方のもとでは、原則として時価を把握することが極めて困難な有価証券は想定されません。今般の改正は時価の算定方法を明らかにするもので、時価評価の範囲の変更を意図するものではありませんが、時価を把握することが極めて困難な有価証券の定めを残した場合、金融商品会計基準のもとでも時価を把握することが極めて困難な有価証券が存在すると誤解を生じさせかねないため、時価を把握することが極めて困難な有価証券の記載が削除されています。

ただし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする取扱いとすることとされています。

これにより、これまで時価を把握することが極めて困難であるとして、取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としていたもののうち、市場価格のない株式等に含まれないものについては、時価をもって貸借対照表価額とすることとなります。

また、市場価格のない株式等については、時価に関する注記が不要とされています。

(8) 開示(金融商品会計基準第40-2項、金融商品時価開示適用指針第5-2項、四半期適用指針第80項)

<開示項目>
金融商品時価開示適用指針では、基本的にはIFRS第13号の開示項目との整合性を図っていますが、一部の開示項目についてはコストと便益を考慮して採り入れていません。金融商品時価開示適用指針案では、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として、次の開示項目の注記を求めることとされています。

  • 貸借対照表又は注記のみで時価評価する金融商品
    • 時価のレベルごとの残高
  • 貸借対照表又は注記のみで時価評価するレベル2の時価又はレベル3の時価の金融商品
    • 時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
    • 時価の算定に用いる評価技法又はその適用の変更の旨及びその理由
  • 貸借対照表において時価評価するレベル3の時価の金融商品
    • 時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報
    • 時価がレベル3の時価に区分される金融資産及び金融負債の期首残高から期末残高への調整表(純損益に計上した未実現の評価損益を含む。)
    • 企業の評価プロセスの説明
    • 重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明
      一方で、IFRS第13号では上記に加えて次の注記を求めているものの、金融商品時価開示適用指針では、これらの注記は求めないこととされています。
    • レベル1の時価とレベル2の時価との間のすべての振替及びその振替の理由
    • レベル3の時価について観察できないインプットを合理的に考え得る代替的な仮定に変更した場合の影響

なお、四半期適用指針では、上述の①のうち貸借対照表において時価評価する金融商品について、企業の事業運営にあたっての重要な項目であり、かつ、前年度末と比較して著しく変動している場合に開示することとされています。

<期首残高から期末残高への調整表>
金融商品時価開示適用指針では、上述の⑤時価がレベル3の時価に区分される金融資産及び金融負債の期首残高から期末残高への調整表において、期首残高から期末残高への増減を、次の増減理由に分けて記載することが求められています。

  • 当期の損益又はその他の包括利益に計上した額
  • 購入、売却、発行及び決済のそれぞれの額
  • レベル1の時価又はレベル2の時価からレベル3の時価への振替額
  • レベル3の時価からレベル1の時価又はレベル2の時価への振替額

ただし、②購入、売却、発行及び決済のそれぞれの額については、作成コストと便益のバランスの観点から、これらの純額で注記することも認められています。

(9) 設例(時価算定適用指針[設例1]から[設例8])

時価算定適用指針では、IFRS第13号の設例を基礎とした設例が設けられています。

[設例1]レベル1の時価に対する主要な市場又は最も有利な市場
[設例2]金利スワップの当初認識時の時価
[設例3]現在価値技法-割引率調整法の使用
[設例4]現在価値技法-期待現在価値法の使用
[設例5]有価証券の売却に関する制約
[設例6]負債の時価-発行社債の時価の算定における相場価格の使用
[設例7]負債の時価-発行社債の時価の算定における現在価値技法の使用
[設例8]資産の取引の数量又は頻度が著しく低下した場合の市場利回りの見積り

2. 本会計基準等の適用時期等(時価算定会計基準第16項から第20項、時価算定適用指針第25項から第27項等)

(1) 適用時期

2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています。

ただし、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができるとし、また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされています。

(2) 経過措置

次の経過措置が定められています。

<時価算定会計基準及び時価算定適用指針>

  • 時価算定会計基準及び時価算定適用指針の適用初年度においては、時価算定会計基準案及び時価算定適用指針案が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。
  • ①の定めにかかわらず、時価の算定にあたり観察可能なインプットを最大限利用しなければならない定めなど、時価算定会計基準及び時価算定適用指針の適用に伴い時価を算定するために用いた方法を変更することとなった場合で、当該変更による影響額を分離することができるときは、会計方針の変更に該当するものとし、当該会計方針の変更を過去の期間のすべてに遡及(そきゅう)適用することができる。また、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできる。これらの場合、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬(ごびゅう)の訂正に関する会計基準」第10項に定める事項を注記する。
  • 投資信託の時価の算定に関しては、本会計基準等当公表後概(おおむ)ね1年をかけて検討を行うこととし、それまでの間は現行の取扱いを踏襲する。この場合、時価のレベルごとの内訳等に関する事項の注記は要しない。
  • 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記については、投資信託の取扱いを改正する際にその取扱いを明らかにすることとし、それまでの間は金融商品時価開示適用指針第4項(1)の注記は要しない。

<金融商品時価開示適用指針>

  • 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する開示項目について、適用初年度の比較情報は不要とする。また、期首残高から期末残高への調整表について、金融商品会計基準を年度末の財務諸表から適用開始する場合には、適用初年度は省略することができる。

<棚卸資産会計基準>

  • トレーディング目的で保有する棚卸資産の時価の定義の見直しにより生じる会計方針の変更については、時価算定会計基準の適用初年度における取扱いと同様に将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。

<金融商品会計基準>

  • その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末日前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めの削除や、市場価格のない株式等以外の時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の定めの削除など、時価の定義の見直しに伴う金融商品会計基準の2019年改正により生じる会計方針の変更は、時価の算定を変更することになりうるという意味では時価算定会計基準が定める新たな会計方針の適用と同一であるため、時価算定会計基準の適用初年度における取扱いと同様に将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。

<四半期財務諸表適用指針>

  • 適用初年度には、時価のレベルごとの残高の注記を不要とする。

3. 本実務指針等の概要

(1) 時価の算定に関する取扱い

金融商品の時価の算定に関する取扱いについては、時価算定会計基準で定めることとされたため、金融商品会計実務指針等における定めは削除されています(金融商品会計実務指針第38項、第45項、第47項から第57項、第60項から63項、第101項から第104項、第118項、第127項、138項、金融商品Q&AQ15、Q26、Q32、Q44、Q47)。

(2) その他有価証券の決算時の時価としての期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額の取扱い

時価の定義の変更に伴い、金融商品会計基準におけるその他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めについては、その平均価額が改正された時価の定義を満たさないことから削除されています。これに併せ、金融商品会計実務指針においても、同様の規定が削除されています(金融商品会計実務指針第75項、金融商品Q&A、Q37)。ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いを踏襲し、その旨を明示することとされています(金融商品会計実務指針第91項)。なお、この場合であっても、減損損失の算定には期末日の時価を用いることとされています(金融商品会計実務指針第284項、金融商品Q&A、Q32)。

また、上記の取扱いに併せ、外貨建取引等実務指針において時価として期末前1カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いる場合の換算についての取扱いも削除されています(外貨建実務指針第11項)。

(3) 時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券等の取扱い

時価算定会計基準案において、時価を把握することが極めて困難な場合は想定されないため、本実務指針等においても当該取扱いが削除されています(金融商品実務指針第92項、第93項、金融商品Q&AQ18、Q31、Q33)。ただし、金融商品会計基準にて、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲することとされています。

4. 本実務指針等の適用時期等(外貨建実務指針第47-13項、金融商品会計実務指針第195-16項)

金融商品会計基準を適用する連結会計年度及び事業年度から適用することが提案されています。

5. 公開草案からの主な修正点

  • 公開草案では、2020年4月1日以後開始する事業年度及び連結会計年度の期首から適用することを提案し、また、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することも認めることが提案されていましたが、本会計基準等では、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした上で、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができるとし、また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされました。
  • 公開草案では、第三者から入手した相場価格の利用にあたっては、原則的な適用時期からさらに1年間の準備期間を設け、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用する経過措置が提案されていましたが、当該経過措置については、本会計基準等の原則的な適用時期を2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度からと変更したことから、削除されています。
  • 公開草案では、投資信託の時価の算定に関して、2019年7月4日改正の直前の金融商品実務指針の取扱いを踏襲したうえで、金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記を前提に、便宜的な時価のレベルの分類を定めることが提案されていましたが、本会計基準等では投資信託の時価の算定に関する取扱いが改正されるまでは、時価開示適用指針第26項の経過措置を適用した投資信託について、金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記は不要とされました。
  • 公開草案では、民法上の組合等の構成資産が主に市場価格のない株式等である場合について、民法上の組合等への出資金を市場価格のない株式等に含めることが提案されていましたが、本会計基準等では、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資についても、投資信託の取扱いを改正する際に取扱いを明らかにすることとし、それまでの間は金融商品時価開示適用指針第4項(1)の注記は不要とされました。

本稿は本会計基準等及び本実務指針等の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

<本会計基準等全文>
企業会計基準委員会(ASBJ)ウェブサイトへ

<本実務指針等全文>
日本公認会計士協会ウェブサイトへ


情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?